私たちの研究室では、小児期の神経疾患を中心に基礎的、臨床的研究を行っています。臨床研究では主に運動機能障害児におけるリハビリテーションや栄養の問題について検討しています。 基礎的研究では、熱性けいれんやてんかんに関連する遺伝子の研究、ミトコンドリア病と関連するミトコンドリア機 能の解析、エキソソーム複合体に関連した分析をおこなっています。臨床研究では、本学付属病院において小児科とし ての診療活動とともに臨床研究も行っています。
研究メンバー
- 中山智博
- 新 健治(付属病院准教授)
- 中山 純子(付属病院准教授)
けいれん性疾患の病態解明
キーワード:小児、熱性けいれん、遺伝子
熱性けいれんは小児にみられるけいれんで最も多く、日本人は海外と比 べてその発症頻度が高いといわれています(人口の約9%)。私たちは日本人熱性けいれん患者家系を対象として連鎖解析を行って2つの熱性けいれん遺伝子座を同定し、OMIMデータベース(注)に登録されました。シークエンス解析法やDNAチップによる解析などを行って、これら2つの熱性けいれん遺伝子座に存在する責任遺伝子の同定を目指しています。
(注)OMIMデータベース ヒト遺伝子変異と遺伝病に関する国際的に代表的なデータベース。ジョンホプキンス大学 McKusick博士の名著のオンライン版。日々更新されている。
自閉症及びアルツハイマー病患者血小板を用いたミトコンドリア機能解析
キーワード:酸素消費量測定計、ミトコンドリア機能
自閉症及びアルツハイマー病患者のミトコンドリア機能をOxygraphという 酸素消費量測定計により解析することを予定しています。本機器は、ミトコンドリアを分離する操作の必要性がなく、正確に測定することができる機器です。 通常は筋肉組織からミトコンドリアを分離し、各酵素活性を分析する方法を用います。これには筋肉組織を得るために麻酔下で針を刺したり、手術をしたりして筋肉をとってきて用います。また、ミトコンドリアを分離する際には化学的に細胞膜を破壊し、遠心分離をおこなう操作が必要なため組織障害が起こっ てしまいます。本研究において容易に採取できる血小板を用いた非侵襲的で簡 便な測定方法を確立し、ミトコンドリア機能を測定することによって疾患の病態解明に役立っていくことを期待しています。
ミトコンドリア細胞とエキソソーム複合体の類似性
キーワード:ミトコンドリア細胞、エキソソーム複合体
私たちは核のない細胞を長期培養することに成功し、それをミトコンドリア細胞と名付けました(以下文献)。この細胞は通常の細胞と比べて非常に小さく、核がな いにもかかわらず長期生存し、かつ自己増殖能を持つことが特徴です。一方エキソソーム複合体は様々なRNAを内包する多蛋白複合体で、細胞外情報伝達に使われると考えられています。ミトコンドリア細胞は形態・大きさがエキソ ソーム複合体と類似しており、エキソソーム複合体の1種である可能性があります。エキソソーム分離キットを用いてミトコンドリア細胞を処理し、その自己増殖能および形態が維持されるかどうかを検討します。
(文献)Nakano K, Ohsawa I, Yamagata K, Nakayama T, et al. Continuous culture of novel mitochondrial cells lacking nuclei. Mitochondrion. 2003;3:21-7.
臨床研究
1.重度の運動機能障害児のエネルギー必要量に関する研究
キーワード:脳性麻痺、重症心身障害児、運動機能障害、エネルギー代謝
2.小児の上肢機能における巧緻性障害に関する研究
キーワード:上肢、発達障害、巧緻性障害、臨床生理学的手法
3.小児の運動機能障害におけるボツリヌス毒素治療の効果
キーワード:小児、ボツリヌス毒素治療、歩行解析、上肢機能
4.小児におけるジフェニルアルシン酸等に係る健康障害に 関する臨床研究